引き続き五台山(中国山西省)のお寺めぐりの記事です。
前回記事では初日(2016年5月5日)に訪問した10軒のお寺のうち、五台山のメインとも呼べる殊像寺と五爺廟を紹介した。今回はその次に行った塔院寺・顕通寺・菩薩頂の3つを紹介しよう。
いずれも当日の午前中に訪問している。上記3つのお寺について写真とともに紹介しよう。
塔院寺
塔院寺(中国語:塔院寺 Tǎyuànsì)は五台山風景名勝区のシンボルともいえる白い仏舎利塔の立つ寺院である。この仏舎利塔は、もともとは顕通寺の一部であったが明代に独立した寺院となった。

塔院寺の門の前は開けていて、庭園のようになっており、風光明媚な場所だ。五爺廟から300mほど離れたところにある。歩いてもすぐたどり着けるだろう。

門を抜け参道を歩く。

更に歩いて行くとやっと仏舎利塔への入口へとたどり着く。門が閉じられているように見えるが、脇にある小さい入口から入っていく。ここは入場料が10元かかる。

この仏舎利塔は正式名を释迦牟尼舍利塔というが、五台山ではその見た目から主に大白塔と呼ばれている。

この大白塔の下には転輪と呼ばれる「回転させるとお経を呼んだと同じ効果のあるもの」が連なっている。これを回しながら塔を時計回りに3周歩くと良いとのこと。

四隅には大きな転輪があり、これも3回転させると良い。

チベット語のお経を読んでいる僧がいたので見せてもらった。最初、宿の女将に「写真を撮ってよいか」と聞いてもらったのだが、普通話が通じず、隣にいた別の僧に訳してもらってやっと通じた。
五台山には大乗仏教系の僧とチベット仏教系の僧が修行に来ているそうだ。身につけている衣服(袈裟)の色でだいたい区別がつくという。中国語での仏教伝来ルート別の分類名称は次のとおりだ。ここでは関係ないが、ついでに上座部仏教の中国語も紹介しておく。五台山における大乗仏教とチベット仏教の服の色による区別もカッコ内に記した。
先ほどの僧はチベット語の経典を念じていたのだが、紫色の服を着ていた。どうやら型にハマらない僧もいるらしい。

同じ敷地内には1948年に毛沢東が泊まったときの居室が残されていた。毛沢東・江青・周恩来・任弼・陸定らがここに泊まったそうだ。それぞれの居室には「○○居室」という名前の書かれたプレートと写真と略歴が書かれた掲示物が掲げられていたが、江青だけは名前のプレートのみであった。その頃はまさか後年に宗教施設を破壊するような動乱を起こすとは夢にも思ってなかったんだろう。
顕通寺
顕通寺(中国語:显通寺 Xiǎntōngsì)は塔院寺のすぐ隣である。五台山では最も早い時期にできたお寺で、後漢の明帝期(57~75年)に創建された。中国最古の寺院は洛陽にある白馬寺といわれているが、ここ顕通寺は中国で2番目に古いお寺といわれている。平安時代に日本から来た僧・円仁もここに逗留していた。円仁のいたころ(唐代)は大華厳寺(中国語:大华严寺 Dàhuáyánsì)と呼ばれていたそうである。清代の康熙帝のころ(1687年)に大显通寺へと改名されたとのことだ。

塔院寺から出てきて顕通寺への参道に入る。ぐるっと回り込んで歩くので、200mほど歩くことになるだろう。

鐘楼を抜け、顕通寺の敷地内に入る。ここも入場料が10元かかる。

敷地は広く、大きな建物が立ち並んでいる。この真っ白い建物は有名な無量殿だ。中には明代の廬舎那仏銅像が鎮座している。石造りの建物で、中がひんやりとしているのが特徴だ。

無量殿の後ろには、金色の建物がいくつか見えてくる。これらの建物は銅製なのだそうだ。

なお、境内の中の横には部屋がいくつもあるが、これは僧侶が逗留して修行するための部屋だ。円仁の時代の建物はここには残ってはいないが、彼もこのような部屋で寝泊まりしていたのだろうか。

顕通寺を後にする前に、最初に通った鐘楼にのぼる。ちょうど先ほど行った塔院寺の裏側にあたり、ここからだと大白塔がよく見える。
菩薩頂
菩薩頂(中国語:菩萨顶 Púsàdǐng)も顕通寺の近くにあり、歩いていくことができる。名前に「寺」がついてないが、ちゃんとした寺院である。北魏の時代(5世紀)に建てられたのが最初だ。清代には、康熙帝や乾隆帝が五台山に参拝に来た際、この菩薩頂に宿をとったとのことである。文殊菩薩の道場として名高い。

この写真は先ほどの顕通寺の境内から撮ったものだ。山の頂上に見えるのが菩薩頂である。

菩薩頂へ行くためには幾段もの階段を登らなければならない。まずはこの石段を登っていく。

中に入るには入場料が必要だが、宿の女将がごにょごにょと話すと無料で入れた。そして立ちはだかるこの108段の階段。傾斜はかなり急だ。

ここで宿の女将さんが「玩游戏吧(ゲームしましょ)」と言い出す。まずこの108段の階段のたもとから、目を閉じつつ向かいにある壁に向かって歩くと。壁に右手を当てたら目を開ける。右手が「佛」字のいちばん下に長く伸びている場所に当たったらご利益があるという。
私もやってみたが、「佛」の字には当たらず、余白に手をついてしまった(笑)。ちょっとした休憩を兼ねた余興としてはおもしろかった。

階段を上る際には108段を数えてはいけないそうだ。階段を登りきると、さすがに見晴らしの良い景色が開けてきた。

階段の上には大文殊殿や清代皇帝により立てられた石碑などがあった。皇帝のみが通ることができるという階段に設置された龍の道もある。
帰りは菩薩頂の裏から出てきた。なんと裏からだと車で来ることができる。脚の悪い方でも来れるようになっているようだ。この日は殊像寺からはじめ徐々に歩いてきたのだが、距離を合計すると宿からかなり離れたらしく、帰りはここからタクシーに乗ることとした。
塔院寺・顕通寺・菩薩頂関連用語
それでは塔院寺・顕通寺・菩薩頂に関連する中国語を見ておこう。
以上、五台山のお寺めぐりその2(塔院寺・顕通寺・菩薩頂)でした!