華北旅行記事を連載中なのだけれど、ここで1つ蘭州ラーメンについてのお話をしよう。後ろのほうに北京観光の続きも書いている。
蘭州ラーメンとは
中国の各地を旅行すると、必ず蘭州ラーメン店を目にする。蘭州は地名で、甘粛省の省都だ。名前だけ見れば蘭州名物のラーメンなのだろうと想像できる。

この蘭州ラーメン店ではイスラム教徒でも飲食可能なハラル料理を提供していて、肉が入ったとしても牛肉か羊肉。ラーメンは注文したその場で[こねる]→[引っ張る]→[ゆでる]をしてから提供される。安くて味もそこそこ。スープはあっさりとした薄めの味。具は牛肉とパクチーが標準で、肉は牛肉だけでなく羊肉も注文できる。ラーメンだけでなく、炒め物やぶっかけ飯も食べられる。
この蘭州ラーメン店は1店1店は規模が小さいけども、中国各地に同じような店が何店もあってそれがずっと不思議だった。調べてみると意外な事実がわかった。
蘭州ラーメン店チェーンの真実
まずこちらの記事を参考にした。
上記記事を無批判に受け入れると、どうも中国各地にある小規模な蘭州ラーメン店は青海省の回族自治県の人々によって経営されているようだ。蘭州市は甘粛省の省都なので、なぜ青海省の人々によってその名前が使われているのか更に疑問は深まる。
記事によるともともとは青海省の人々によって1980年代に「青海ラーメン」としてラサで開いたお店が元祖だったそうだ。次にアモイに進出することになった段階で「蘭州ラーメン」という店名にしたと。「蘭州ラーメンという名前のほうが評判がいいから」というのが第一の理由だそうだが、青海省には「蘭州の人が開いたお店の弟子がラーメン屋を開いたと伝わっている」という話もあったそう。そこから1990年代に中国各地へと拡大し、今のような多店舗展開になったとのこと。拡大できたのは資金・土地・教育などに対する地元政府の全面バックアップがあったから。小さな家族単位で1店の経営をする小規模店舗というスタイルが特徴だ。
ここで出てくるのが当の蘭州の人々。なんで「青海ラーメン」が「蘭州ラーメン」を名乗ってんだ!って話になる。実は1990年代に蘭州からも全国へ進出する試みはあったのだが、最初はことごとく損失を出してうまくいかなかった。なぜならば本場の蘭州ラーメンはスープの作り方に妙味があり、時間・材料などのコストが高くつくからだ。2009年より東方宮という会社が蘭州市政府と協力し、フランチャイズ形式で再度全国展開への攻勢をかけたところ、成功して今に至るそうだ。こちらの東方宮の店舗は面積何平方メートル以上などの条件があって、比較的大きなレストラン形式になっている。
整理すると、現在の蘭州ラーメン店チェーンは2系統あって、1つは青海省の人々による家庭的小規模店舗。もう1つは蘭州の人々が始めた東方宮というフランチャイズ式レストラン店舗。今のところ数としては青海省の人々による小規模店のほうが圧倒的に多い。東方宮のほうはこれからといったところか。
もちろん本場・蘭州には地元に根を張ったお店がたくさんあるし、他の都市には青海系や東方宮以外のチェーンもある。最近では脱サラしてオリジナルの蘭州ラーメン店を開くような人もいることも付け加えておこう。
北京の東方宮で蘭州ラーメンを食べてみた
私は2004年~2007年の間は中国で節約暮らしをしていたので、青海系の小規模店には頻繁に食べに行っていた。今回の北京旅行ではたまたま東方宮の店舗を見かけたので試しに入ってみた。行ったのは2016年4月30日、映画『ビリギャル』を見た後のことである。

まず店の入口からすぐのカウンターで注文と会計を済ませまる。オーソドックスな传统牛肉拉面(伝統牛肉ラーメン)を頼んでみた。伝統牛肉ラーメンは1杯22元。青海系の小規模店舗だったら10元ほどで食べられるから2倍以上のお値段だ。サイドメニューで涼菜10元と煮玉子2元もつけてみた。

店内は値段相応といおうか、とても清潔で広々としていた。18時台に入ったにもかかわらず客は私1人という状況に一抹の不安を覚えつつ(笑)。涼菜と煮玉子はレジのあるカウンターでもらって、お盆を持ってラーメン専用窓口へ行き、レシートを見せる。

ここでラーメンを打ってる中の人たちに「请问,这里可以拍照吗?(ちょっと、ここで写真撮っていい?)」と聞いてみた。1人は「这要问领导(それは上に確認しないとなぁ)」などと渋ってたけども、手前のコックさんは「可以啊,你拍拉面师傅的手艺吧(いいよ、ラーメン職人の腕前を撮ったってくれ)」というので写真に撮らせてもらった。

パクチーとラー油の量はお好みで入れられるようだ。「要不要辣椒?(ラー油いる?)」と聞かれたので「一点点吧(少しね)」と答えた。

食べてみるとなかなかおいしい。スープはあっさり系だが上品な味がする。涼菜はいくつかの種類から選べたのだが、もやしのがいちばんおいしそうだったのでそれだけ盛り付けてもらった。実はこのもやしの涼菜だけでご飯3杯くらいいけそうなくらいしょっぱかった(笑)。煮玉子は特に味のついてないタイプ。確かにスープは青海系のお店よりはコクがあったように思える。
蘭州ラーメンを構成する条件として一清二白三红四绿五黄という言い方がある。それぞれ次の五つのことだそうだ。
- 清→汤清:スープが澄んでいる
- 白→萝卜白:大根が白い
- 红→辣椒油红:ラー油が赤い
- 绿→香菜绿:パクチーが緑
- 黄→面条黄亮:麺が明るい黄色
このお店は上記五つについては全て満たしていたようだ。私は大根入りのを食べたのは初めてだと思う。

麺はこんな感じの細麺。コシがあっておいしい。麺の太さは宽面(きしめんのような幅広面)や毛细(そうめん並みの細麺)など数種類のバリエーションから選べるそうだ。
何より清潔な店内は嬉しい。青海系の小規模店はお世辞にもきれいとは言いがたいところが多い。この東方宮なら日本から来たばかりの方でも容易に受け入れられそうだ。旅行などで東方宮のお店を見かけたらぜひ入ってみてください。
蘭州ラーメン関連用語
それでは蘭州ラーメンに関連する中国語を見ておこう。
以上、蘭州ラーメン店チェーンと東方宮のお話でした!